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【読書日記】徳川家康と武田勝頼 平山優

素晴らしい本だ。

こういう本を望んでいた。

 

山梨県にゆかりのある著者であり、武田氏の研究専門家。その成果を多くの著作にしている。「長篠の戦の後、武田氏は衰退し、それが主因となり滅んだ」というような事前のイメージとは異なり、長篠の後に、武田氏は最大版図を築き上げる。最大版図を築いたが故に滅んだとも言えるのかもしれないが。つまり、目が届かなくなり、高天神城陥落となったことなど。

武田勝頼は愚将」というのも、一面だけの見方であり、「運」が味方にあれば、全く別の歴史になっていたかもしれない。例えば、信玄の死がもっと遅ければ。あるいは、上杉謙信の死後の越後政治に「北条」が絡んでいなければ、など枚挙に暇がない。(北条の推す、上杉景虎北条氏政の弟)を積極的に助けなかったことも遠因となり、徳川と北条の二正面からの攻撃に晒されることとなる)

だが、「運」こそが、多くのことを決定づけるとするならば、それも歴史なのだと、言い聞かせるしかないのかもしれない。

下記のような歴史の流れが、全て関連していることを、本書では、とても上手く説明している。当たり前だが、歴史は繋がっているし、「そうなった根拠」もあるのだ。

 

信玄の死、勝頼登場、奥平信昌の離反、長篠の戦い上杉謙信の死、上杉家内乱、武田・北条同盟崩壊、徳川・北条連携、信康事件、徳川・北条同盟、武田の二正面戦争、織田・北条同盟、武田勝頼の最大版図、高天神城包囲・陥落、穴山梅雪の離反、武田勝頼滅亡。信長の「富士見物」と家康の「もてなし」、本能寺の変、家康伊賀越え、織田混乱後の家康の甲斐支配、徳川による武田遺臣の登用。江戸時代へ。

 

本書の中で、印象的な記載は下記である。

 

■引用開始

高天神城落城は、武田勝頼の威信を失墜させ、計り知れぬ政治的打撃を与えた。これが武田氏滅亡を決定づけたといえる。忠節を尽くしても、守ってくれなければ、助けてくれなければ、武田に味方し続ける意味がないからだ。高天神城の降伏を許さず、勝頼が見殺しにしたようにみせかけよと判断した信長の見通しは、恐ろしいほど正確だったのである。P.207

■引用終わり

 

これ、現代にも通じている。

会社が滅びる時。人と人の関係が崩れる時。

だから、経営者は、忠誠を尽くす従業員の扱いに気を付けなければならない。

 

織田信長が、旧武田領で苛烈な支配をしたのに対して、武田遺臣の登用と、徳川の治世の巧みさ。そして、武田遺臣の活躍など、学ぶことの多い書物だった。