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【読書日記】名著の予知能力 秋満吉彦

タイトルに魅かれて読み始めてしまったが、大いなる誤解だった。

 

テレビを持たない私には馴染みがない話だが、「NHK Eテレ」とかいうテレビ局で「名著の番組」のプロデューサーをしている著者。それだけでも、付いていけないが、番組を見ていることが前提となっていて、テレビに縁のない私には、全く違う世界の出来事のような感じだった。

 

印象的な話もあり、引用すると以下。

 

P.75フルートは単音しか鳴らないけれど、鳴らすときに常に、実際にはなっていないその音の和音を意識していなければ決していい音色にはならない。

(引用者注:河合隼雄の「しあわせ眼鏡」より)

 

P.163代表的な病は、管理部門の行き過ぎた肥大化である。

(引用者注:「大企業病」について。貞観政要の項)

 

P.228単純な正義を信じ込み、いろいろな社会現象を図式だけで解釈し、何でも善と悪に分けてなで切りにする。そこまで極端ではなかったかもしれないが、カミュが最も忌み嫌ったそんな思考法に、当時の私は陥っていた。

(引用者注:「ペスト」の項)

P.269砂鉄さんは、テレビ番組が日常的に行っている手法は、ル・ボンが分析した「単純化の論理」と酷似しているという。

(ル・ボン「群集心理」)


P.272「わからなさを引き受けることの重要性」「思考し問い続けることの大切さ」を言葉を尽くして語ってくれた砂鉄さんのメッセージが深い印象を残した。

 

P.280この作品から一番学ぶべきことは、「他者の声に耳を傾けること」「わかりあうことだという主旨のことを語ってくださった。

(引用者注:「戦争は女の顔をしていない」)

 

P.285人が何かを伝えようとするときに、必ずある特定の「視点」「バイアス」をもつことを避けては通れないという事実に向き合うことだ。

 

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私が気になった点を引用してみたが、これは反語で言っているのか、本心で言っているのか、韜晦なのか、分かりにくかった。「深い闇」のような、恐怖を感じる本だった。「政治」に絡めた批判も多かったが、「政治」というのは、本当に怖いものだというのをしみじみと感じられた。

テレビを持たないためなのか、違和感を覚える箇所が多々あった。

何とも消化不良の本。