ある新人のことをよく思い出す。
彼は新入社員で年齢が20歳だという。
「ある会社」に入社したが、「別会社」である私の職場にやってきた。
どういう経緯でやってきたのかは聞いていない。
「別会社」なのに、そのときから、私が教育係として教えることになる。
この業務は「経験が無い」ということで、当然、何も知らないところから始まる。
手取り、足取り、業務を説明する日々。
しかし、驚いたことに、物覚えが早く、しかも真面目で、爽やかな青年である。
会話をしていると、こちらまで心が洗われるような気分になるのだ。
一年後、基本的な業務は、出来るようになっていた。
ときどき、
私のところにやってきては「なんか上手くできないんですよね」などと聞いて来る。
ちょっとデータを見せてもらうと・・・
「測定器の設定合っています?」と私は言って、
(一応、別会社なので、丁寧に対応している)
彼の操作している測定器を見に行く。
そして彼は、また一つ学習していくのだ。
しかし、1年しかいなかった。
「元の職場」へ戻って行ったのだ。
仕事ができるまで「タダで」教育をして、去っていく。
いつものパターンである。
だが、私は彼に多くのことを教わった。
「今時の若者」というのが、ほんの一面でしかないこと。
こんなにも真面目に辛抱強く、
そして爽やかに仕事をする20歳の若者が居たのだということ。
そして自称「PCオタク」の彼から、PCの特殊な設定についても教わった。
異常にマニアックなことを知識として持っている凄まじい人材であった。
自分のチームで、もっと長く一緒に仕事がしたかった。
去っていく時、彼は言う。
「元の職場、戻りたくないんですよね」
「どうして?」
「人間的にイマイチの人が居て、一緒に働くのが苦痛なんです」
元気でやっているだろうか。
彼がよく使っていた測定器を見る度に、思い出すのだ。